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2006.03.09 (Thu)

夏目漱石「草枕」より

山路を登りながら、こう考えた。

智に働けば角が立つ。

情に掉させば流される。

意地を通せば窮屈だ。

とかくこの世は住みにくい。

住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。

どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。

人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。

やはり向こう三軒両隣りにちらちらする唯の人である。

唯の人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。

あれば人でなしの国へ行くばかりだ。

人でなしの国は人の世の国よりも猶住みにくかろう。

越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、

寛容(くつろげ)て、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。

ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降る。

あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。
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2006.03.09 (Thu)

主人公

人生の主人公ときに替はる気せり 白湯に浮かびし顔ふつと飲む

              米川千嘉子
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